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「全部、終わった」

長門の無機質な声が、俺にそう告げた。終わった、何が?俺の目の前には、いつも通りの校舎が広がっている。そして、その校舎を少し不思議そうに眺めるハルヒ。俺たちは、先程までこことは別の場所にいた。俺やハルヒがぼんやりしているうちに、長門か古泉か、もしかしたら朝比奈さんが問題を解決したのだろう。あの空間は、閉鎖空間とはまた違うらしい。俺はやたらと騒ぐハルヒを、なだめていただけだった。
だけど、終わった?俺が疑問符を浮かべていると、ハルヒが振り返り俺の方へと歩いてきた。その口が開き、何か言葉を発する前に意外な人物が言葉を挟んだ。
涼宮さん、と少し涙ぐみながら声を発するのは泣き顔も麗しい朝比奈さんだ。しかし、雰囲気がいつもと違っている。違和感を感じる前に、朝比奈さんは唐突に告げた。

「今まで黙っていてごめんなさい。私は、この時代の人間じゃないんです。もっと、未来から来ました。私は、未来人なんです」

どこかで聞いたようなフレーズだった。しかし、そんな事を言って良いのか?ハルヒには絶対に秘密だったはずだが。そこまで考えて、俺は長門の言葉を思い出した。まさか、すべて終わったと言うのは、

「何言ってんの?映画の続き?」
「違うんです。本当なんです。信じてもらえないかもしれないけど、嘘ついたままじゃ嫌だったから、」

朝比奈さんの言葉に、ハルヒは微かに眉を顰めた。まあ、普通はそうだろう。俺も最初はそうだったし。
朝比奈さんの必死な様子に、ハルヒの顔が歪む。すると、「おや?」と驚いたような声が背後から聞こえた。その声の主は、ハルヒの方へ近付き、ハルヒの目の前へと手を伸ばした。

「古泉?」
「最後の、閉鎖空間になるんでしょうかね。発信源はここ。涼宮さんの正面です」
「古泉君……どういう事よ」

話についていけないせいか、苛立ちを隠そうともせずハルヒは古泉に問いかけた。そして、今日までですが、と前置きしてハルヒにこう囁いたのだ。

「今まで隠していてすみません。僕は超能力者です」
「なに、を」

からかわれたと思っているのか、表情を強ばらせたハルヒの手を古泉はそっと掴む。その後、俺たちに向かって「最後ですから、みなさんもご一緒に。僕の手に掴まってください」と笑顔のまま言った。
右手に俺たち全員が掴まると、古泉は何もない空間に左手を翳した。その手は、どこかへと吸い込まれていく。あ、と思ったときには遅かった。モノクロの場所。気が付いたら、俺たちはすでにその中にいた。

「ここって、あの時の。あいつもいるわ、キョン!」
「あ、ああ」

ぐあー、と大きな怪物が前見たときよりは破壊力三倍増しで辺りを破壊している。じゃあ、行ってきますね、と言って古泉は宙へと浮かんだ。そのままハルヒの方を一瞥した後、一直線に飛んでいく。

「な、なんなのよ、あれ。なんであんたは驚かないのよ!」

もう何回も見てるしな、と答えるわけにもいかず俺は黙って古泉の向かった方向へと視線を向けた。ハルヒの声は微かに震えている。その時、ふと怪物の大きさが増した。ハルヒが苛立っている証拠だ。……と思っているうちに、二匹に増えた!一匹目は古泉と戦っているが、二匹目はフリーだ。そいつは古泉には興味を示さず、あろうことか俺たちを狙ってきた。ここにおまえらの主人がいるのに!手が振り下ろされる。もう、駄目だと思った。
しかし、衝撃はいつまでだっても襲ってこない。おそるおそる目をあけると、そこには長門。うっすらと、シールドのようなものが見えた。怪物は俺たちに近付けないようだ。

「ユキ……?」
「涼宮ハルヒ。私は、宇宙人だ」



書けなかったけど、元の場所へ帰ろうとする3人をハルヒが最後の力で引き留めるという話にしたかった。
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